楽記

笙 うた 奏者 大塚惇平のブログです。

朗詠「嘉辰」のこと。

さて、次回の演奏会で行うワークショップで、皆さんに雅楽の歌物、朗詠の「嘉辰」を歌っていただこうと思っているのですが、その嘉辰について、少し書いておこうと思います。

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朗詠というのは、平安時代の貴族が、外来の漢詩に節を付け、歌って楽しんだものです。和漢朗詠集 - Wikipediaなどが有名ですね。江戸時代まではお公家さんたちによって伝承されてきました。現在は宮内庁式部職楽部の先生方によって伝承されています。

「嘉辰」は隋から唐にかけての文人である謝偃(しゃえん)の詩で、和漢朗詠集の「祝」の部に収められています。文字通り祝い事の席で多く歌われていたようです。

以下が、その楽譜。

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 嘉辰令月歓無極 萬歳千秋楽未央

めでたい時節と月の巡り、喜びは極まりない。これから先いついつまでも楽しみが尽きることはない。

漢字の横からにょろにょろと出ているのは「博士(はかせ)」と言って、音の上がり下がり、旋律のかたちを視覚的に表したものです。仏教の声楽、「声明(しょうみょう)」から来ていると言われています。博士というのも、また独特なもので、面白いです。

youtubeに博雅会さんの映像があったので、貼らせていただきます。現在の伝統の中ではこのような男性の斉唱に、笙、篳篥龍笛の付け物がつき、無拍節で歌われます。

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さて。当日は、この嘉辰の歌い方を皆さんにレクチャーし、雅楽の音感覚を味わっていただきたく思います。雅楽でも、「歌」が、やはり基本なのかなあ、と感じさせることがあります。雅楽は、体験してみて、初めてその面白さがわかるところがあると、僕は思っています。ぜひ、その面白さを皆さま体験しにいらしてください。さらに、この嘉辰に合わせてペルシャ音楽風のフレームドラムをつけてみよう・・・ということもします笑。とても面白い体験ができるのではと思います。ではでは、 皆さまにお会いできるのを楽しみにしております。