北本のこと。
埼玉県北本市に引っ越してきてほぼ丸1年になります。北本、というとたいていの人はわからないのですが、高崎線で大宮から5駅先ですね。さてさて、その北本からこの五月末に引っ越すことになりましたので、ちょっと、北本に捧ぐ、ということで、色々思うこと、感じることなどを書いて見ようとば。
まさか自分が埼玉に住むことになるとは思わなかったのですが、静岡で生まれ育ち、その後都内しか知らない人間としては、北本は関東ローム層がただどこまでも広がる地平で、その土地の雰囲気もまったく新鮮なものでした。
周辺を歩いて思ったことは…やはりお百姓さんが丹精してきた土地なのかな、ということでした。屋敷の防風林の雰囲気や、門構え、家の様子など…そこに、お百姓さんとこの土地が重ねてきた時間と記憶が映っているような気がします。田園と、田畑がひたすら広がっています。
そこに佇む石仏やお地蔵さんも、その土地と人の暮らしと結びつき、形作られてきた信仰なのだとしみじみと思う…。
そして荒川。河川敷には田んぼや麦畑が広がり…其処彼処にあるお社や祠にも独特の雰囲気を感じます。
豊かな雑木林や池もあって、とても気持ちがいいです。
この一帯の鎮守の、高尾氷川神社。ここもとても趣があります。弁天様が祀られている池も。ここは安産祈願の信仰が昔からあるようで、祈願した人の名前の書いてあるノートを見ると、今もたくさんの方が祈願に訪れているようです。
どうしても、自分はその土地と人の生活と、信仰の関わりに関心が向く…信仰というのは、その土地の自然と人がどう生活を切り結んできたかの証であり、そこから読み取れることがとてもたくさんあるからだと思う…。
人の思いとか、気配、営みというのは、その場に残るものであり、情報としてその場に堆積される…その「気」のようなものがまた新たにその場を形成し、自然にも影響を与えていく…人間の営みとは、そのようなものなのだなあと改めて感じます。
僕は北本のこの時期の夜が好きで、と言ってもまだ2回目なのですが、真夜中、しんしんと窓の外の雰囲気を聴いていると、蛙の鳴き声が聞こえ、その奥に闇がある…その闇の奥に、この土地の自然と、これまで生きてきた人々の集合的な記憶が鎮まっている夢見の時間があるような気がして、またしんしんとした気分を深めている…。
なにやらつらつらと書いてしまいましたが、一年間という短いあいだだったけれども、この土地に僕もいろいろな体験をさせていただいたな…と改めて思います。そのことの感謝を込めて。惇平
大塚惇平
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